幸せのかけら
ーー吉川くんのせいで、講義に集中できなかった。
家に帰る前に復習しようとラウンジでひとり勉強していると、また彼がやってきた。
"前いい??"
"……聞く前に、座ってるじゃん"
全然悪気もなく、余裕そうにこっちを見てくる。
"さっきの、冗談だよね?"
"ヒトの気持ちを、漢字2文字で片付けんな"
"だって、今日で2回しか会ってないし。
それに吉川くんは響の友達でしょ?"
"だから?"
"え"
"友達だったら何?"
ーー考え方が違うんだろうか。
"たとえば。
もし友達に彼氏がいたら、私は絶対好きにならない。
というより、その人のこと、友達の彼氏っていう風にしか見えなくなるけど"
"それでも、好きになったら?
なんで、絶対って言い切れるんだよ"
吉川くんの真剣な視線に、私は口を閉じた。
"惚れたもん負けって言っただろ。
響の彼女とか関係ない。
あんた、愛の、笑顔にやられた。
響とのこと考える余裕がないくらいは、愛のこと好きになったっぽい"
ーーーーここまで言えば、伝わる?
あまりにも真っ直ぐで、率直な吉川くんの言葉に、不覚にもドキッとしてしまった。