黄金と四聖獣
「お礼を言いたいだけよ。運んでくれたと聞いたの。ありがとう」
私がそう返すと、フェルナンは
「あぁ、腕がもげるかと思ったよ」
と月を見ながら真顔で言い放つ。
「そんなヒョロヒョロな腕してるからよ」
「喧嘩売ってんの?筋肉はあるよ」
「そっちが売ってきたんじゃない」
そんなくだらないやり取りをしてから、再び
沈黙が訪れた。
「用は済んだんじゃない?早く消えなよ」
フェルナンがそう沈黙を破ると、私は
「うん」
と返事をして、背を向けた。
それから、ふと思うことがあって
振り返って言った。
「あなたの名を付けたのは、もしかして現王?」
普通、名は親がつけるもの。
そんなのは当たり前なことだけど、フェルナン
という異国の名前を、付けようとすることは
庶民の出でも貴族の出でも、まずしない。
「それがなに」
そうフェルナンが返したのを聞いて、
「すごくいい名だと思う。」
それだけ笑って言うと、私はそのまま
借りている家屋に向かって歩き出した。
やっぱり、シオン様の双子なのを感じさせる。
他者に影響されない強い意志。
きっと、現王が一番合うと思った名をつけたの
だと思う。