黄金と四聖獣
幸せな旅の日常は、ある日突然崩れ去る。
私は麒麟様と共に、市場に降りてきていた。
そこから、南の祠はほど近いようで、
私は胸を弾ませていた。
けれど、それとは対照的に、麒麟様は浮かない
顔をして、時折キョロキョロと辺りを見回して
いた。
「麒麟様…?」
私がそう呼びかけると、麒麟様はいつもの様な
笑顔でこちらを向いて首を傾げた。
挙動不審のように見えるのは、私の思い違い
だったのかな…
そう思って、麒麟様に何でもないと首を横に
振ってから、市場の通りの方に目線を戻すと、
多くの鎧を着た厳つい男達が、こちらをじっと
見ているのが見えた。
「…麒麟様、なんでしょう、あの人たち」
私が麒麟様の服の袖を引っ張って聞くと、
麒麟様はそちらに目を向けて、驚いたように
目を見張る。
そして、そちらの方向から目を逸らすと、
即座に私の手を引いて、来た道を戻り始めた。
「今の男!目まで金色だった!」
「間違えない!追え!!」
そんな乱暴な声が、後ろから響く。
その声に、麒麟様は私を抱き上げると
走って逃げ始めた。
私は、麒麟様にしがみついて振り落とされない
ようにするので精一杯だった。
森の中に入り、慣れた地形を利用して引き離す
けれど、あれだけ大人数で来られたら、
見つかるのも時間の問題のような気がして
ならなかった。
深い、刺だらけの茂みの中に二人で
這いつくばって隠れると、麒麟様が口を開いた
「フィアネ、すまない」
たった、それだけの言葉で、私は色々なことを
察した。
…どうせなら…子供らしく、何もわからない
方が良かったのかもしれない。
そう思いながら、私は頭の中を整理する。