黄金と四聖獣
私は、麒麟様の姿をもう見なかった。
辺りに意識を集中させ、足音の位置を探る。
そしてたった一点、包囲の穴を見つけると、
そちらに向かって駆け出した。
案の定そこには兵士は居なくて、私は一気に
森を抜けた。
森を抜けた先にあったのは、さっき麒麟様と
一緒にいた市場だった。
恐らく、兵士たちは市場には戻ってこない
だろうと踏んでいたみたいだった。
市場の中には兵士は一人もいなくて、
ただ、和やかな雰囲気が漂うだけだった。
そんな和やかな雰囲気が、私の胸に酷く
突き刺さった。
今…ずっと隣にいてくれたあの人が隣に居ない
なんで、私はあの人を置いてきたんだろう。
市場の道の真ん中、私は立ち尽くした。
「嬢ちゃんどうしたんだ?」
と、近くの店の店主が心配そうに声をかけて
きた。
私が顔を上げると、その店主は
「さっき買い物してくれた嬢ちゃんじゃねぇか。あの金髪の連れの奴は居ねぇのか?もしかして、はぐれたか?」
と、屈んで私の目線を合わせた。
…この人のお店で買い物をしたほんの数分前
までは、本当に本当に、楽しかった。
そう思い返した時、私は気づいたら
踵を返して森へと走り出していた。
「お…おい!嬢ちゃん!?」
そんな店主の声も、耳には入らなかった。