黄金と四聖獣
小さな刃物を、小さな手で振りかぶる。
その瞬間、後ろから強い力で襟元を引かれた。
私は後ろに体制を崩し、驚きながら私を
引っ張った主を見る。
私の真横で、美しい金色の髪が揺れる。
…生きてた…麒麟様…
少しだけ安堵したのもつかの間で、麒麟様は
私から刃物を奪い取ると、そのまま兵士の喉元
をかき切った。
瞬間、赤い液体が吹き出し、兵士は倒れた。
そして、勢いに任せて刃物を振った麒麟様も、
その場に勢いよく倒れてしまった。
「麒麟様!!」
私は駆け寄って麒麟様を抱き起こす。
すると、私の手にびちゃっと液体がついた。
私が驚きながら手を見ると、その手のひらは
私の髪のように真っ赤に染まっていた。
他でもない、麒麟様の血で。
「…なんで、戻って来た…?」
息を切らしながら、麒麟様は私に問う。
「死んでほしくない…一緒に居たい…麒麟様」
駄々をこねるように言いながら、私は自分を
責めた。
もう少し来るのが早ければ…
いや、私があの場から逃げなければ、なにか…
なにか変わっていただろうか。
私に今、朱雀の力があれば、
なにか変わっていただろうか。