黄金と四聖獣




「…こんな傷、何ともない」



フェルナンがそう言った瞬間、私はカチンと


きてしまった。





「そのなんとも無い傷でここで今にも死にそうな顔してたのはどこの誰なの?あなたはもっと身体を大事にした方がいいわ。あなたが死んだら悲しむ人が…」


「いないよ」



私の言葉を遮るようにして放ったフェルナンの


言葉は、その場に虚しく響いた。





「奴隷が一人死んだところで悲しむ人なんていないでしょ」



「…奴隷…?」



だって、フェルナンは恐らく現王の側近の


辺りの地位なはず。




そんな地位にいる人が奴隷だなんて…



私がよく分からないというような顔をして


いるのを読み取ったように、フェルナンは




「僕は奴隷だったんだよ。小さい頃に親に売り飛ばされて。奴隷なんていくらでも換えが効くんだし僕が死んでも全然問題ない。」



そう言いながら、フェルナンは私の手を


腹からどける。




「あ…」


油断していた私はフェルナンを引き止めようと


するけれど、フェルナンはさっさと


立ち上がって、近くに置いてあった服を


掴むと、


「傷、治してくれたことには感謝するよ。あとまぁ、僕が死んでも誰も困らないにしても、死んでやる気はないよ」



と言って踵を返し、さっさと戻っていって


しまった。




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