黄金と四聖獣
次の日の昼下がり、私はおじいさんに何かを
話すフェルナンを見かけた。
遠目からだったので、何を話しているのかは
聞き取れなかったけれど、フェルナンが何か
紙のようなものをおじいさんに渡すと、
おじいさんは深々と頭を下げた。
いつの間にか、建物の陰からシオン様が側に
来て
「用水路の建設、終わったみたいだな」
と向こうから姿が見えないよう覗き込みながら
そう言った。
あぁ…それで…
私もそのシオン様の言葉に納得する。
「エーラ」
シオン様が視線を向けずにそう呼びかけると
「はい」
と、近くの家屋の屋根からエーラが飛び降りて
来た。
「私は、城から出てこの旅に来られて良かったと思ってる」
急にそういうシオン様に、エーラは戸惑いを
隠せないような表情をする。
「だからそんな憎むな。お前達、親友だっただろう」
そんなエーラに手を伸ばし、シオン様は
笑って頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「憎しみにかまけて、楽しい過去まで辛い過去に変わってしまうのは寂しいじゃないか」
嘘偽りないシオン様の笑顔と
言葉を受けたエーラは
ただ、何も返事をせず俯いただけだった。