黄金と四聖獣



三人で山を超える途中、雲行きが怪しくなり



昼間だというのに辺りは暗くなり始めた。





しばらく経つと、ぽつりぽつりと雨が降り出し


その直後、雷の音と共に雨は土砂降りに


なってしまった。





私はクオンに外套を被せてあげると、


「寒くない?」


と聞いた。



クオンは、ピィー元気よくと鳴いた。


その声に安心して、また歩みを進める。



シオン様は少し先で地図を読みながら進んで


いるし、エーラはその後で獣が出ないかと


注意を払っていた。





私は、外套のフードが無い分、目に雨水が


入りやすくなっていたので、下を向いて歩いた



すると、視線の先に黒い靴が映り、驚いて


顔を上げた。





目の前にはエーラが立っていて、


私に自分の外套を被せると言った。




「昨日のお礼」


それを私が返す暇もなく、エーラはシオン様の


隣へと行ってしまった。




…なんて、周り優先の人なんだろう。


ずっとあんな様子じゃ、いつか体調を崩す

のではないかと、私は気が気じゃなかった。





けれど、笑顔もあまりまともに作れないほど


不器用なエーラの優しさは、


とても温かかった。





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