黄金と四聖獣
「いい宿が見つかって良かったですね」
と、私はシオン様に手ぬぐいを渡しながら言う。
「本当だな、親切なお婆さんだった。」
そうシオン様が穏やかな口調でいうと、
「聞こえてますぞ!」
と、入口の方から怒鳴り声が聞こえて、
私たちは驚いて振り向いた。
「お姉さんとお呼び」
そう言って胸を張る女将さんに、
「すみません、お姉さん」
と、シオン様は素直に謝った。
すると、女将さんは
「よろしい」
と満足気に返してから、声のトーンを下げて
言った。
「あんた方、西の森には近づいてはなりませんぞ」
「西の森…?どうしてですか?」
と、私が聞き返すと、女将さんは
「あそこは山賊共の巣だ。そのせいで客足もぱったり途絶えた。ここに泊まるのは、遠くから来た旅のもんぐらいだよ」
そう女将さんはため息ながらいうと、
「言いたかったのはそれだけだ、ごゆっくりー」
と、今度は気の抜けるような声で言って
去っていった。