君が罪なら俺は罰を受け入れる





映画館でチケットを購入し、今度は上映中に飲むドリンクを購入するためにレジに並んだ。




程々に込んだ館内、上映間際のものもあってかレジも混雑しているようだった。







『すっごい並んでるねー。上映までに間に合うといいね』





『上映って言っても最初は予告とかだろうから多少は遅れても大丈夫だろ』






俺がそう言うと「そうだね」とバカ女は笑う。




本当に何をしていても、何を言われても、それでも最後は笑うよな、コイツー……









『百合、何飲む?』




『……………』






『百合?』





『……………』







突然、バカ女の返事がなくなり、静かになったことで俺はバカ女に目を向ける。




バカ女はある一点に目を向けていて、そして表情も消えていた。








(………何?)



俺はバカ女の視線を追いかけて、自分自身の視線も変えていく。








『………………あ…………』




(……………元彼………)






思わず出てしまった声、慌てて結んだ唇。



でも心の中で呟いたのは、“元彼”という単語。







そこには元彼とこの間元彼と一緒に公園に来ていた友達がいた。






(…………新しい彼女とかじゃなくて良かった……)




もし、もしも、この場に新しい彼女がいたら、このバカ女の心が本当にパキッと割れてしまうような気がした。










『………お客様』




俺も完全に元彼に目を奪われていて、店員に呼ばれているのに全然気が付いていなくて。




何度目かに呼ばれて、その店員の呼び掛けに気が付いた。








『……あ……すんません………』



俺は隣にいるバカ女の手を引き、レジに近づく。



俺に手を取られ、状況を理解したのかバカ女も俺と一緒になってレジに近づいた。





でも、俺は怖くてバカ女を見ることが出来なかった。



今、バカ女を見れば、きっと元彼の方を見てる、からー…








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