君が罪なら俺は罰を受け入れる
注文したものを受け取り、会計を済ます。
その一連のやり取りを終えても、それでも俺はバカ女を見ることも、話しかけることも出来ない。
ただ黙って、そのレジを離れようとした。
それに気がついたのか、バカ女は慌てて俺の後をついてくる。
そのことに俺は気が付いているのに、それでも何も話しかけられず、そしてバカ女も話しかけてはこなかった。
どちらとも話せない、話しかけない雰囲気が妙に息苦しくて、俺は急いで上映されるはずの場所へと急いだ。
『………小原』
でも、その足もこのバカ女の発した声で止まる。
俺は何事もなかったかのように振り返る。
『どした?』
『……あ………私、上映始まる前にちょっと……トイレに行ってくるね!』
バカ女早口になりながらもそう言うと、俺の返事を聞かずに走りだしていた。
(……トイレとか嘘、つくなよ……)
バカ女が早口でそう言った時、微かだけどバカ女の瞳が揺れていた。
だから、俺は一瞬で悟るー……
(最初から元彼を見掛けたから元彼の所に行ってくる、とか……最初から言えよ)
俺は近くの壁に寄りかかる。
『…………なんで元彼と遭遇するかね……』
元彼を見掛けなければ、きっとバカ女の心を見ずに済んだのに。