君が罪なら俺は罰を受け入れる
『……あ、ごめんね。
女子トイレ、ちょっと混んでて………』
揺れる瞳、震える声ー……
それが嘘だと、俺は知ってる。
『そっか。でもまだ宣伝みたいなやつだと思うから平気だろ』
俺が何事もなかったようにそう答えるとバカ女は下手くそな笑みを浮かべる。
そんな下手な笑み、俺にはすぐに分かるのに、それでもきっとバカ女は必死だから。
『ほら、行こうぜ』
俺は何も気付かない振りをして、片手でバカ女の細い手首を掴んで歩き出す。
掴まれた手首に何も反応しないバカ女、俺はそれが素直に嬉しかった。
(元彼が気になるなら、今すぐにでもこの手は離されるだろう…)
(元彼が気になるなら、今すぐにでもその手は元彼の手を掴みに行くだろ?)
(そうしないのは……俺との映画の約束を守ろうとしてくれているから、だろ?)
このまま、このまま俺が何も知らない振りをしていれば。
このまま、俺がバカ女の手首を掴んだまま座席に座れば。
バカ女は俺の傍に居てくれるー………
でも、神様はいつもそんな自分勝手な俺を見ているのかもしれないー……