君が罪なら俺は罰を受け入れる
いつもならすぐに電話を取るのに、今日に限ってバカ女が電話に出ない。
場内を出て、右か左か、どっちにバカ女が行ったか分からない俺は、右に左に顔を動かし、近くにバカ女がいないかを確認する。
でも、どこにも見当たらなくてー………
スマホを持つ手に意識が集中する。
(早く出ろ……早く出ろ……早く出ろよ、あんのバカ女………)
『……………………………小原』
それは今にも消え入りそうな声。
突然聞こえた声に振りかえると、そこには真っ赤な目をしながら俺を見つめるバカ女の姿があった。
『…………………』
予想はしていた、こんな姿だってこと。
けれどどんなに心で、頭で思っていても、俺の体は硬直してしまう。
思考回路が停止し、口さえも動かなくなってしまうー………
『……………小原………私ね……頑張ったんだよ……?
ちゃんと自分の気持ちを伝えて………別れたくないって………ちゃんと言ったの……。
でもね……ダメだった………やっぱり彼の気持ちは揺れ動くことなくて……。
ねぇ……小原?肩………かして………?』
『…………………………………』
支えがなければ今にも崩れ落ちそうなバカ女を見ながら、それでも俺はそんなバカ女に言葉をかけてやれなくて。
ただ、
ただ、俺の体が勝手に動いていたー…………
『ばーか。そんな顔してないで、さっさと泣けよ』
(そんな泣くのを必死に堪えた顔してないで、俺の前では、俺の前だけではそんな無茶すんなって………)
俺はそっと、涙を必死に堪えているバカ女を抱きしめたー………
『………小原………』
『言ったじゃん、俺。
俺が慰めるって、俺がどんな時もお前をフォローするって。
お前の不細工な泣き顔を隠してやるから、思う存分、泣けよ?』
(それが、俺の存在理由だー………)
(そんなことくらいしか出来ないけど、でもそれが俺の存在理由なんだー……)