君が罪なら俺は罰を受け入れる
『じゃ、切るわ……』
『……ごめんね……いつも電話しちゃって……』
『いいよ、もう慣れさせられたから』
『………あはは………何それ……でもそうだね、きっと小原に一番話を聞いてもらってると思うし……本当にごめんね……』
電話の向こうから聞こえてくる、震えているアイツの声ー……
(「一番話を聞いてもらってる」か………)
『……なんでだろう………小原の声が聞きたくなるの……。
小原の声で、“嘘だよ”って言ってもらいたくて………』
そこまで言って、途切れるアイツの声ー……
聞き返さなくても、状況を聞かなくても、俺の頭には声を出さないように必死になって、それでも涙をいくつも流しているアイツが思い浮かぶ。
『………嘘だよ。
お前が好きになった男なんだろう?
だったら、今は一時の気の迷いであって、すぐにお前の元に戻ってくる、きっと』
すぐにその場に行ってやれないから。
すぐに崩れ落ちているであろう、その小さな体を抱きしめてはやれないから。
せめて俺がそこに着くまで、アイツには少しでも笑ってほしくて、それで俺はアイツが望むことを口にする。
アイツが好きになった男がそう口にしなければ事実が変わることはないけれど、それでも、それでも俺はやっぱりそう言ってしまうんだ。