君が罪なら俺は罰を受け入れる
『すみません、突然声なんかかけて……』
そう声をかけてみたけれど、元彼はその言葉には無視し、椅子に座った。
俺も真向かいの椅子を引き、その椅子に腰かけた。
俺が座るのを確認したのか、元彼は『それで』と切り出してきた。
『……百合のことです』
俺のその言葉に、元彼は眉を顰めた。
『もらった時間はあまりないんで。
単刀直入にお聞きしますが、百合とはもうヨリを戻すということはないんですか?』
それでも俺は言葉を続けていく。
『俺が百合と別れた方が、あんたも万々歳でしょ。
それなのに、どうしてそんなことを聞いてくるんすか?』
顔はとても愛らしい顔だと言うのに、その顔に似合わぬ低い声で問いかけられる。
俺はその問いかけに唾を呑みこむ。
『言い方を変えます、あなたにヨリを戻すとか聞かれるのは不愉快です』
元彼の言うことはもっともだ。
元彼の友達が教えてくれたことが真実なら、こうして俺に話しかけられることだって元彼からしたら不愉快でたまらないことだろう。
『確かに、あなたと百合が別れてくれれば万々歳です。
百合の想いを、百合の涙さえ見なければ、万々歳でいられたかもしれません。
でも、俺は百合の本当の想いを聞いて、百合があなたの為に流す涙を見て、思ったんです。
百合にはあなたじゃないとダメなんだってこと、百合が心から必要としているのはあなただってこと……。
だから……百合とヨリを戻してもらえませんか?』
『捨てたらなら同情するなとか優しくするなとか……酷い男のままでいろとか、挙句、確かい言いましたよね?
後は俺が引き受けますとか……それが今になってヨリを戻せって、ころころ意見が変わるんすね、あんたは』
元彼は鼻で笑ってた。
でも、俺も元彼の立場だったなら、きっと同じことをすると思う。
“なんなんだよ”とか、思うよー………
だって自分でも思う。
なんでカッコいいこと言ったと思えば、こんな風にお願いしたりとか、あり得ないだろ。