春夏秋冬を君色に
エンジンが温まっていない車が白い排気ガスを出しながら通り過ぎて行く。
そんな車を何台も見つめながら歩いていると、急に肩を掴まれ歩道の端へ押されるように寄せられる。
「ぅわっ!」
思わず出た声の後に横目で睨んだ自転車が通り過ぎていった。
「……」
振り返ると色白のキレイな人が、顔を崩して立っていた。
耳からイヤホンを外すと、私が言葉を出す間もないくらいすごい剣幕で怒り出すその人。
「お前バカなの? イヤホンしててもいいけど後ろから来てる自転車に気づけるようにしとけよ」
「ご、ごめんなさい…」
あまりの迫力に反射的に謝ってしまう。
なんか朝からテンション下がるな…。
「まぁ、あんなスピード出して歩道走る自転車にも問題あるけどさ。気をつけてよ」
そう言った彼は、私の頭に優しく手を置いた。
顔を上げるとその人は優しく微笑んで私の横を通り過ぎた。
一瞬にして私の周りに光が弾け飛んだ様な感覚になる。
「……」
まだ感覚が残る頭に手を置き、オリーブ色のモッズコートの後ろ姿を見つめている。
雲の隙間から顔を出した光は包み込むように地上を照らし、私に芽吹いた気持ちを応援してくれているように感じた。