【短編】「言わせてやろうか、好きだって」
「言わせてやろうか、好きだって」
「そしたらさ、松本先輩なんて言ったと思う?」
「早く帰れブス、とか?」
「…シね」
まるで住み慣れた自分の部屋にいるかのように私の部屋のベッドに座ってくつろいでいる翔平は、平然とした態度で読んでいるファッション誌をパラリとめくる。
「遅くなっちゃったから家まで送るよって!でね、二人で帰ったんだよ!?やばくない!?」
「お前なんか不審者に襲われたって背負い投げで秒殺なのに?」
「ねえ待って?私いつから天才柔道少女になった?」
自分の部屋なのになぜか居場所を床に追いやられている私が諸悪の根源を睨みつけると、またもやなんてことない顔で「黒帯じゃなかった?」なんてボケを被せてくるから、諦めた私はせめてもの抵抗として少し大袈裟にため息を吐いてみる。
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