【短編】「言わせてやろうか、好きだって」
脈がないことなんて、自分が一番よく分かっている。
私が所属しているテニス部の副部長である松本先輩は、〝誰にでも〟優しいから。
その優しさは、時としてとても残酷なものになってしまうけれど。
私を家まで送ってくれたあの日だって、部活が終わってから一人で自主練している私を見つけると、みんなで帰ってる中一人で抜け出してきてくれて。
「邪魔じゃなかったら付き合うよ?」なんて言いながら、雨が降ってくるまで練習に付き合ってくれて。
思い出すだけで胸がキュンとなるような、そんな人。
私に恋というものを、教えてくれた人。