ビューティフル・ワールド

髪を拭いてやりながら、どうする、と柳瀬は自分に問いかけた。
りらはまったく無防備でされるがままになっている。
キスをしようと思えば、今すぐにできる。それが吉と出るか凶と出るか、さっぱりわからない。
拒否されなければ、このまま抱くことだってできる。
だけど、抱くのか?
抱いて、何かこの関係が変わるだろうか。

それとも、好きだ、と言うのが先だろうか。
だけど、そうか、と言われて終わるような気がする。最悪、知ってる、などと言われるパターンもあり得る。

少しの間、迷った。
だけど、欲望には勝てない。
キスはしたいし、許されれば抱きたい。
好きな女が、こんな脱がせやすそうな格好で、あっさり自分に触れさせているのだ。

「…お前が悪い。」
「え?」

柳瀬は屈んで、顔を上げたりらの唇に柔らかく押しつけるように、くちづけた。

一瞬、りらは身じろぎをした。
しかしそれだけだった。

「……」

唇を離すと、りらは目をぱちぱちさせて、柳瀬の顔を見た。
ああ、少なくとも今、自分は彼女の視界の真ん中に居る。
洗ったばかりの頬に触れた。
見上げてくるその化粧を一切していない顔は、あどけなく、可愛かった。

「…好きなんだ。」

柳瀬が言っても、りらは顔を赤らめもしないし、逃げようともしない。
耳に届いているのだろうか?

「好きだ。」

もう一度キスをする。今度は深く。
何度繰り返しても、りらは抵抗しない。
次第に柳瀬は痺れるような欲望に支配されていく。唇を広げさせ、舌を入れながら、その身体をまさぐり始めていた。
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