ビューティフル・ワールド
奥の部屋は寝室になっていた。清潔な白いカバーがかかったシングルベッドにりらの身体を柳瀬は横たえた。
一瞬、このカバーは大久保が洗濯したものではないかと嫌な想像をしかけたが、居間と台所以外に侵入は許されていないはずだと思い出し、安心した。
柳瀬は奉仕する気満々だったのだが、ベッドの中で、りらは奔放だった。
ワイシャツを脱ぎ捨て、覆いかぶさってきた柳瀬の肌を、時にいやらしく甜めたり、時に動物的に噛みついたりする。
翻弄されまいと柳瀬もりらの敏感なところを探し、つかまえようとする。
感じたり、感じさせられたり、だんだん主導権争いのようになってきて、柳瀬はじゃじゃ馬を飼い慣らすような気分になってきた。
くすくす笑うりらの柔らかい身体を、ついに男の力で無理やり組み伏せた。
一瞬視線を交わすと、濃密なキスをしてきた柳瀬にりらもおとなしく応える。
それからはもう、溶け合うようにひとつになった。
りらは快楽に忠実だった。自分の身体に、柳瀬の身体に、押し寄せる官能に、集中した。
身体を突き抜ける欲望を押しつけ、受け入れられ、柳瀬はわけがわからなくなるほどの悦びにくらくらした。
乱れる二人の呼吸とシーツの擦れる音だけが部屋に響いている。
柳瀬の髪の先から、汗の雫が滴る。
冷房も入れていないので、もうどちらのだか判別できないほど二人とも汗にまみれていた。
「は、あっ…」
急激に高まる快感にりらが一際高い声を漏らし、それを聞いて柳瀬の頭の中が沸騰した。今まで情事に事欠いたことなどない。だが、こんなにも興奮したこともない。
柳瀬も獣のような声を漏らして、二人は絡み合って果てまで上り詰めた。