ビューティフル・ワールド
4.


今日もよく晴れていた。より一層暑かった。

りらの家に向かう今日も変わらずスタイルの良い後ろ姿を、大久保が追いかけているのだが、あまりの暑さにうんざりとしている柳瀬は気づかない。

相変わらず鍵がかかっていない玄関の扉を開け、居間に入ると、りらはソファに片膝を立てて座り、
窓という窓を開け放し、呆けた顔をして見るともなく空を眺めていた。

口には銀の棒をくわえ、それが日射しを受けてきらりと光っていた。
その横顔を見て、柳瀬は首を傾げる。
ソファの対面にある低いテーブルにはショッキングピンクの液体がガラスの皿に浮いている。
その傍らにはここしばらく絵の具を浸していないであろう乾いた筆が無造作に置かれている。一体これはどういう状況なのだろう。


柳瀬の背後から遅れて大久保がひいひい言いながら入ってきて、そのまま柳瀬を越して台所へ入っていった。顔を合わせるのは久しぶりだ。
両手に下げていた重い荷物引き上げ、深い息と共に置く。奥にはどこから引っ張り出してきたのか、かき氷機が鎮座しており、
大久保が買ってきた大荷物が大量の氷であることを認め、
柳瀬はりらがくわえているものがスプーンで、目の前の派手な色の液体がかつてかき氷であったものだろうと理解した。

おおかた、またりらがかき氷を食べたいと言いだし、大久保が作ったものの氷が足りずに買い足してきたといったところだろう。依然として皿の横の筆はさっぱり意味がわからない。
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