もう一度、恋をしてもいいですか?

会計を済ませて
カゴから袋に入れていると

背後、上方から
「こんばんは」という
男性の声がした。


真知は
自分に向けられている声だとは思わず
前を向いたまま品物を
カゴから袋に移し替えていると

また

「こんばんは、真知さん」
と再度、声がした。


真知は名前を呼ばれて
初めて自分だ、と思い
振り返ると

そこには背の高い
一般的に「カッコイイ」と
言われる部類の男性の姿が
目に入った。

真知は見知らぬ男性が
自分の名前を口にしたので
不審に思いながら


「どちらさまですか?」
と返事をした。


「これは、ごめんなさい。
僕は伊咲桜介と申します。
『フルマーノ』で
働かせてもらっています」

と自己紹介をされ、
初めて気がついた。


「あぁ・・お噂の・・・」

と言いかけて、やめた。
自分の噂なんて
耳にしたくないかもと思い

「わたし、
相沢真知っていいます。」

というと

「うん、華枝ちゃんと大地から
名前を教えてもらって・・・」

と桜介が答えた。


「そうでしたか、
では、失礼します」

と真知が荷物を抱えて
歩きだそうとすると


ふわっ
と持っていた袋が軽くなり

「持ちますよ、
その代わりもう少しだけ
お話させてもらえませんか?」
と桜介が言った。





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