奴隷少女と我儘王子
 私が案内された牢は思っていたよりもずっと大きくて、私が立っていても問題はなさそうだ。移動も出来るようにするためなのだろうか、頑丈そうな台車の上にのっていた。
 中には私がぎりぎりくるまれそうな質の悪い毛布が一枚あるだけ。今の季節では凍えて死んでしまうこともあるのだと、実際に凍え死んだ村人を思い出し、無意識に身体がブルリと震える。それだけではなく、冷たい鉄が触れている部分が体温を奪っていき、慌てて毛布を被った。
けれど実際、いつも村で過ごしていた冬に比べれば、牢のなかは暖かいくらいだ。村は冬になると大量の雪に包まれるため、毎年寒さで亡くなる人が少なくない。
 そうゆうときは、大体「『呪われた子』がいるせいだ」と言って、外に放り出されたことも一度や二度ではない。この場所も震える程度には寒いけれど、今まで暮らした村の冬に比べてみると途端に暖かく感じるから不思議なものだ。
「教育……ふふっ。勉強が出来るのですね、楽しみです。勉強……村で教わった以来です。先生は元気にしているでしょうか?」
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