奴隷少女と我儘王子
 これは私が六歳の時のこと。私は村の少年に右目をくり抜かれそうになったことがあった。こんな目無くなった方が良いと思って、抵抗はしなかった。けれど少年は泣きながら、君のせいじゃないのに、と謝ってくれた。あの時は本当に驚いて、とても嬉しかった。
 それから私達は村の大人に気づかれないように、度々合うようになっていた。村に隣接する森に、少し広い空間がり、そこに隠れて会っていた。少年は色々な事を教えてくれた。それらは恐らく、子どもは知っていて当たり前なことなのだろうが、私には何もかも新鮮で、楽しいばかりだった。
 そんなある日、村に商人が訪れる。けれど彼は決して商人らしい格好ではなく、まるで旅人のような服装で、商品らしいものすら何も持っていない。ただ肩から大きな鞄を下げているだけ。
「少しの間宿を借りられませんか? その代わり子どもに勉強を教えますので」
彼はそう言って、父と少年がふたりで暮らしている家に泊まるようになった。
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