奴隷少女と我儘王子
「それはこの国の歴史書だから、当然だよ。君の歳で読めるなんて、本来はあり得ないことだ」
「そんなに貴重な本なんですね。先生は凄いです」
 先生は「私の歳で読めるはずのない難しい本だ」という意味で言ったようだが、私はこれを「私の歳で読めるはずのない貴重な本だ」と解釈した。先生は正確に伝わっていないことに気づいて苦笑する。
「そんなことないよ」
 私は知らないことだが、この時の既にこの国の文字の殆どを正確に理解していた。この国でこんなことが出来るのは、貴族か学者位だ。
「続きを読みますね。【我が国の始まりは隣国、アトラン大国に大きく関わっている。アトラン大国は我が国が建国されるよりも、更に古くから存在する国である。そして、我が国と長きに渡り戦争を繰り返す国でもある】」

 こうして先生の下で、様々な知識を得て行く。知識商人とは本来同じ土地に長時間留まらないと村長が言っていたのに、この関係は一年もの間続くことになる。
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