私の恋は、期限つき
「よろしければ、上のバーに移動して二人で飲みませんか?待ちぼうけくらった者同士で…」

そんなことを言ってくる。

手を掴まれたのが、気持ち悪い。


「やめてください。」
そう言って手を振り払ったが、相手が引き下がろうとしない。

相手の手が、また私に触れようとしたその時、後ろから抱きしめられた。


「お待たせしました。
こちらの方は?」

落ち着いた、私の好きな声にぬくもりがふわりと降ってきた。

「暇なようで、声をかけてきたんです。」

「そうでしたか…。失礼ですが、勝手に人のものに手を触れたりしないでいただきたい。」
普段大我さんからは、聞いたことないような冷たい声で相手の男性へ言った。

背中越しだったから、顔はわからなかったけど、男性は、大我さんの顔を見るとそそくさと逃げていった。


「申し訳ありません。遅くなってしまいまして、嫌な思いをさせてしまいましたね。」
先ほどの冷たさは、どこへいったのかと思うほど、優しい声音で言う。

「いいえ、大我さんのおかげで大事には、至っておりませんもの。心配ご無用ですわ。」

「それにしても、今日の格好は、とても魅力的です。声をかけてしまいたくなる気持ちがわかります。」

大我さんに魅力的と言われて、両手を頬にあてたら、少し熱を帯びていた。

「そんな仕草もかわいらしいですよ。」


さらっとそんなことも言われて、さらに熱を帯びてしまう。
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