カ・ン・シ・カメラ
☆☆☆

病院の手術室の前のベンチに、颯はいた。


さっきまで元気に笑っていたのに、今は憔悴しきった様子でうつむいている。


「颯、大丈夫」


横に座り、颯の背中をさする。


すると颯はようやく顔をあげ、あたしを見た。


「純白……俺……どうすればいいだ……」


颯の目の下にはクマができていて、精神的に追い詰められていることがわかった。


「大丈夫だよ颯。きっと希彩ちゃんは助かるから」


あたしは心にもない事を言い、颯の手を握りしめる。


颯も、あたしの手を握り返してきた。


その手は頼りなく震えている。


「今日……純白が帰った時希彩もすぐに家を出たんだ」


「そうだったんだ?」


「あぁ。急に、友達との用事を思いだしたからって言って……。俺、あの時希彩が出かけるのを止めなかったんだ」
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