カ・ン・シ・カメラ
この人物は颯の部屋から監視カメラを移動させ、そして颯の部屋とそっくりな部屋を作っていた事になる。


どうしてそんな事を……?


「純白、どうした?」


頭の中が混乱と恐怖で一杯になっていると、颯がそう声をかけてきた。


「颯、部屋に入れて」


「いいけど、どうした?」


「早くして!」


説明なんてしている暇はない。


あたしの怒鳴り声に颯は目を見開き、そして玄関をあけたのだった。


あたしは颯の体を押しのけ、階段を駆け上がる。


勢いよくドアを開け……ガランとしたその部屋に一瞬目の前は真っ白になる。


やっぱり、ここに杏里はいなかった。


泣き出してしまいそうになるのを我慢し、置いてあるクマのぬいぐるみを手に取った。


頭に付いているマジックテープを外し、中を確認する。


カメラは入っているものの、電源は切られたままだ。


アプリで一度も起動されていないということだ。


「うぅぅぅ……!!」


あたしはその場で地団太を踏み、唸り声を上げた。

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