カ・ン・シ・カメラ
「っ……!」


あたしはそのまま数歩後退し、そのまま尻餅をついてしまった。


恐怖で声は張り付き、思うように体も動かない。


次は……あたしが殺される番なの?


男はじりじりとあたしとの距離を詰めてくる。


あたしは四つん這いの状態で壁際まで移動した。


その時ポケットからスマホが落ち、いつの間にか起動されていた監視カメラのアプリが今のあたしを映し出した。


あたしの顔は恐怖で歪み、真っ青だ。


ハッと視線を上げると、男がすでに目の前に迫ってきていた。


「あ……あぁ……っ」


あたしは自分の死を悟った。


その瞬間。


懐かしい香りが漂ってきて、あたしは一瞬目を見開いた。


香水などではない、その人どくとくの体臭だ。


「か……叶さんでしょう……?」


震える声でそう聞く。
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