意地悪くんと鈍感ちゃんの初恋物語
「あぅ……。ありさ……」

いつまで鈴木が出てった扉を見つめてるつもりだ。
いい加減行かないと、間に合わない。
そりゃあ俺だって、出来ればもう舞台は出たくないけど……。

「ほらもう観念しろって。
行くぞ?」

手を差し出せば、おずおずとその白い手をそこに乗せてくる。

周囲から、わぁぁ、と感嘆のため息が漏れる。

「頑張れよ、見てるからな~」

「舞台でキスか、いいなぁ」

さっきの鈴木の話を聞いていたんだろう。
高橋が心底羨ましそうに、教室を出る俺たちを見送った。
< 211 / 251 >

この作品をシェア

pagetop