意地悪くんと鈍感ちゃんの初恋物語
そんな勝手な気持ちでキスをしたところでに伝わるわけもなく。

「バカ、瀬田のバカ!
何してるの?
こんな大勢の前で……」

ぽっと火照る頬を両手で抑えて、小声で文句を言う。
声が震えていて、瞳は潤んでいて、ちなみにその小声はマイクに拾われていた。
愛くるしい声も、食べちゃいたくなる表情も、全てが皆にさらされている。
美空ちゃーん! 立花可愛いー! と、アイドルライブ? みたいな歓声が上がっている。
何かムカつく。
俺の美空だっての。

それにしてもこのマイク、こんな小さな声も拾うのか。
俺はそれを利用してやろうと思った。

「じゃあ、後で誰もいないとこで、またしような?」

あくまでも小声で言った。
あくまでも。
< 220 / 251 >

この作品をシェア

pagetop