意地悪くんと鈍感ちゃんの初恋物語
「バカ優斗!

いっつもいっつも、あたしばっかり名前でバカバカ言って!
ずるいんだからっ!

あたしがバカ美空なら、瀬田はバカ優斗よ!」

初めてだ。
彼女から、苗字じゃなくて名前で呼ばれたのは。
これは、嬉しい。

彼女は、言ってやったぞ! とでも言いたげな得意げな顔をしている。
俺を喜ばせていることに、気づかない。

いつもより丁寧に頭を撫でる俺を、不思議そうに見上げるぽかんとした顔が、愛おしくって仕方ない。

「あーあ、またいちゃついてる」

「立花さんは無自覚だよねぇ」

クラスのあちこちから、冷やかしの声が飛ぶ。
< 44 / 251 >

この作品をシェア

pagetop