好きと言えなくて
それからは散々の言われようで、バカだのアホだの、チビだ、のろまだ、寝坊した私が悪いけどそこまで言われたくない。


え、まだ5時前だよ。


恐る恐る、5時前だと伝えると。


腹が減ったから朝飯を作れと言った。


朝はコーヒーとフレンチトーストが決まりらしい。


そんなの知らないし。


昨日咲良母さんには早起きは朝苦手だから、智尋をよろしくと言われた。


「おい、チビおまえもさっさと食え、喜村が迎えに来るぞ。」


喜村さんって。


ああ、そうでした。


喜村さんは田城ちひろの専属マネージャー。


「喜村にはおまえの事話してあるから、遠い親戚の子って事にしてある。」


血繋がらない妹って言うのもおかしいし、遠い親戚の子が無難だろうけど、おまえは何とかしてもらいたい。


「おまえはではなくて、水谷でお願いします。」


「分かった。綾華にする。」


まぁ、どちらでもお好きに。


もう振り回される事が分かってるし、いちいち気にしてたらやっていけない。


給料も貰えるらしいし。


お金の為ならなんだってやる。


咲良母さんには悪いけど、お金を貯めてこのマンションを早く出て行こうと思った。


朝食を済ませてるとシャワーを浴び、上半身裸のまま髪を乾かせと言われ、それから着替えの手伝い。


今日は雑誌の対談と表紙の撮影。


ラフな私服で良いと言われていたから、田城ちひろをイメージして服を選んだ。


私がやりたかった本当の仕事はスタイリスト。


田城ちひろは苦手だけど、この仕事を頑張ってみようと思った。










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