好きと言えなくて
第2章

急に優しくしないでよ

結局田城ちひろに上手く乗せられて、相手役を引き受けてしまった。


咲良母さんは綾華ちゃんも智尋と同じ事務所に入ってくれて、安心したと喜んでるけど、全然喜べない。


家でも仕事場でもずっと田城ちひろと一緒な訳で、私の自由が全くないのだから。


園村友加里は体調不良で、映画のヒロインを降板した。


私が体調不良になりたい。


いたって健康体の私は風邪もひかないし。


ヒロインが降板して誰がそのヒロインをつとめるのか、監督は映画上映日まで秘密にするらしい。


その方が映画の宣伝になるからと。


もう良いから、ずっと秘密なままにして下さい。


一つ一つ演技指導が入り、毎日クタクタだった。


おまけに家に帰れば、田城ちひろが付ききりで演技指導。


寝かせてよ!


もう嫌だ!


どんなに嫌がっても、綾華はやれば出来る子だからのことばに騙されて、一ヶ月が過ぎようとしていた。


明日は初めてのキスシーン。


私のファーストキスが映画で、みんなに見せる事になるなんて夢にも思わなかった。


「綾華、緊張し過ぎたから。」


明日のキスシーンの練習。


キスの練習だなんて。


二人の喧嘩から、仲直りのキスシーン。


緊張し過ぎで汗が出てきた。


田城ちひろがまさか初めてなのかとバカにしたから、ファーストキスはとっくに済ませましたと嘘をつく。


あまりの演技の下手さに、とうとう田城ちひろが少し話しようと言い出した。












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