好きと言えなくて
トイレが分からないと思ったのか、綺麗なその人が後について来た。


「智尋と話がしたいんだけど。」


「俺は話す事などないから、綾華帰るぞ。」


私はどうしたらいいの。


智尋兄の顔を見た。


「その子が智尋の大切な子なんでしょ。私よりも。」


え、どういう意味?


私が智尋兄の大切な子。


大切な妹。


「清香には関係ない。清香は結婚して幸せなんだろ。」


「私は…………。」


その時彼女の旦那様が現れた。


「清香いきなり席を外して、失礼だろ。」


ごめんなさい、彼女は智尋兄に何か言いたそうだったが旦那様と戻って行った。


私たちも戻った方がいいのかな。


その時田城ちひろのスマホが鳴った。


「母さんが先に戻って良いと言ってるから。」


そう言って、私の腕をつかんで歩き出した。


咲良母さんといたかったけど、智尋兄を一人に出来ない。


無言のまま田城ちひろの運転する車に乗った。


美味しそうな料理だったな。


お腹が鳴った。


田城ちひろが豪快に笑う。


「綾華には負けるよ。でも、ありがとうな。」


私は何もしてないけど、頷いた。


ドライブスルーでハンバーガーと飲物を買って車の中で食べる事にした。


本当に芸能人は大変でめんどくさい。


好きな所にもいけないし、お店に入るのも大変だし、芸能人にはなりたくないと強く思ってしまった。


田城ちひろに泣きたかったら泣いていいよと言うと、綾華がそんな事言うのは100年早いとどつかれる。


良かった。


いつもの田城ちひろに戻って。


智尋兄と彼女の間に何があったのか、分からないけど、何も聞かないでおこうと思った。

誰にも人に知られたくない過去はある。




















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