本日ヒーロー不在につき
「……あーあ。私、三郷くんみたいな人と付き合ったらいいのかなぁ」



思わず、つぶやいていた。

何気なく発したその言葉が終わった直後、カラーン!と大きな音がしたから、反射的に上半身を起こす。

見ると、今は何も持っていない右手を不自然に浮かせた状態で、三郷くんが固まっている。



「え、ちょっと三郷くん、どうしたの」

「……それ、今言うか?」

「え? なにが?」



はー、と深くため息をついて、彼はテーブルに転がった缶を拾う。

それから一度、私と視線を合わせて。

なぜかそのまま立ち上がり、ソファーに横たわる私に覆いかぶさるようにして、片手を背もたれについた。



「へっ、あの、みさとく、」

「おまえはさ、いい加減気づけよ鈍感」

「鈍感?!!」



鈍感ってなに?! 何に『気づけ』って??!

というかあの、この体勢は……っ!??




「この俺が、どうでもいい女を自分の家に入れるとでも思ってんの?」

「えっ、え?」

「こっちは自制して、ひとりでは家に行かないようにしてたっつーのに……」



なにを、言っているんだろう、三郷くんは。

彼の言葉の意味を、うまく飲み込めない。それが顔に出てたのか、私を見下ろす三郷くんがチッと舌打ちする。
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