本日ヒーロー不在につき
「呆けた顔で、のんきに俺の前で寝転んだりしやがって。おまえが他の男と付き合ったりするから、もう俺も、いろいろ限界なんだっての」



そう言った三郷くんが、完全にソファーの上に乗り上げてきた。

ここに来てようやく状況を理解した私は、かーっと頬を熱くしてまばたきが多くなる。



「は、えっ、うそ……っ」

「嘘じゃねーよ。この俺がおまえに4年も片想いとか、ふざけんなよ」

「なんでキレ気味?!」



信じられない。三郷くんが、大学生の頃から私に片想い?

でも、だって、今まで全然そんな素振りなかったのに……っ。



「あたりまえだろ。俺がおまえに下心満載って感づかれたら、こうやって家にも来なくなるだろうし」

「し、下心……」

「笹原が振られたって話聞くたび、俺は心の中でほくそ笑んでたからな」



ほくそ笑むって……なにそれひどいな……。

思わずうらめしげな視線を向ければ、真上にいる彼が楽しげに笑う。



「今もそう。また笹原が振られてくれて、俺としてはラッキー」

「み、」

「だからもう、俺にしとけば?」



言葉と同時に首筋に口づけられて、びくりと震えた。

なんだこの状況。なんだこの状況。

まさか三郷くんに、押し倒されてるなんて。



「みっ、三郷くんあの……っこ、こういうの、良くないと思う!」

「こういうの? 付き合ってもないのにやるって? いいから、今は流されとけよ」



とんでもない発言来た。彼にモラルはないのか。

執拗に首筋に舌を這わす三郷くんの肩に手を置いて、必死で押し返そうとする。
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