名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
鶏肉入りのさらさらしたカレーを食べ終わり、りんごを誰がむくかで壮絶なじゃんけんを繰り広げた結果、負けた。


「六等分するから一人二つね」

「はーい。あ、うさぎにしてうさぎ!」

「えええ、そういうのは早く言ってよ……」


もうむいてしまったのが四つあるので、それはわたしとお父さんで片づけることにして、残り二つをうさぎさんにする。


とりあえず片耳を欠けさせておいた。


「はい」

「ありがとう、って怪我してるんだけど!」


もちろんわざとである。


あああうさぎさんが、などと騒ぎつつ、ぐさっと深々フォークをぶっ刺してさっさと頭から丸かじりにするお母さんの方がひどいと思うんだけど、どうだろう。


「カレー余った?」

「余っちゃった」


やっぱり明日の朝もカレーらしい。


余っちゃった、なんてわたしの確認におどけて言ったけど、いや絶対余るように作ったよね、その大鍋。

なんでうちにあるお鍋の中で一番大きい寸胴鍋で作ったの。

余るのなんて明白じゃないか。確信犯に決まっている。


歯磨きをしつつ、なんとなくテレビでやっているニュースを見る。


のんびりしているうちにニュースの後の枠のドラマが始まって、釘づけでうるさいお母さんを尻目に、ぎしぎし唸る階段を上がった。
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