名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
通知音はそうちゃんだけ鳴る設定にしてある。

他は全部通知をオフにした。ぴこぴこ鳴ると気になるし。


履歴とバッヂとバナーは切ってないから、大抵すぐに気づく。少なくとも一日三回くらいは確認するようにもしているから大丈夫。


家族は緊急時に一番確認しないといけない連絡先だから音が鳴るようにしようかとも思ったんだけど、頻繁に連絡を取りすぎて、毎回毎回鳴るのに疲れてきてしまって通知を切った。


何か急ぎの連絡のときは、すぐに気づけるように、電話をかけてねって言ってある。


そんなわけで、そうちゃんの通知音にしてしまおうと思ったのだった。


そうちゃんと連絡を取るのはずっと先だと思ってたし、ほとんど一緒の日程だから連絡は休み時間か、朝か夜の登下校前後になるわけだけど、家で連絡するなら音が鳴っても人目が気にならないし。


……そうちゃんから連絡が来たことなんてなかったからすっかり忘れてたけど、そういえば、通知音はこれにしたんだった。


そうちゃんだから、なんとなく静かな雰囲気にしたかった。


ゆったりした澄んだ綺麗な音が、二、三回鳴る通知音。

澄んだ硬い音は、わたしの中で勝手に、凪いだそうちゃんのまなざしに似ていることになっている。


通知音に静かなんておかしいかもしれないけど、あんまりうるさい音にはしたくなくて、何度も何度も確かめて決めた。


そっと返事を見やる。


『こんばんは』


焦りと緊張からだろうか。返信をじっくり考える前に、間違って既読をつけてしまって余計に焦る。


ど、どうしよう、いきなり本題入っていいの!? 駄目なの!?


正しい返しは分からなくて、指が勝手に逃げを打つ。
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