名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
そうちゃんはいつも当然のように、当たり前のように近くにいる。


一緒にいて楽しい人。一緒にいて幸せな人。

何も言わなくていいから、隣にいさせて欲しい人。

離れているときは、いつでも会いたくなる人。


わたしの、放課後一緒に帰る人。


ああいいなってふと思うんだ。


ただの実感として愛しくなるんだ。


幸せ。本当に幸せ。


でもわたしは欲張りだから、もっと、もっとって望んでしまう。


たとえば。


ん、と差し出された手のひらを、この前のように自然な動作でつなぐんじゃ、なくて。


「手をつなぎたい」と。

緊張して震えてもいいから、手汗をかいてしまってもいいから、わたしがそうちゃんと手をつなぎたいのだときちんと意思を表明してから、つなぎたい。

このうるさい鼓動に、高まる熱に、ちゃんと意味を込めたい。


そうしたらきっと、そうちゃんとの距離が縮まると思うんだ。


たったそれだけ。

わたしが距離を詰めたいだけ。


だけど、今回のデート……えーっと、デートって多分呼んでいい、よね?


で、デート……をただの思い出にしてしまわないために、一つ、目標を立てた方がいい。


わたしは今年こそ行動すると決めていた。


何かしらの指標があった方が、何もないときよりずっと頑張れる。
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