名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
そういう馬鹿なやりとりは毎日だった。

帰り道に仲良く話すのも初めは毎日だった。


今は違うのは、呼び方のせいだと思う。


佐藤くん、と呼ぶのも。佐藤さん、と呼ばれるのも。


まして、名字を呼び捨てで佐藤、なんて。


そうちゃんを佐藤くんと呼ぶのはどこか違和感があった。


きっとそうちゃんも、わたしを佐藤さんと呼ぶのはどこか違和感があった。


それは自分と同じ名字だからかもしれなかったし、妙に意識している自覚があるからかもしれなかったけど。


ただとにかく確かなこととしては、からかいと好奇心と呼び名の強烈な違和感は、中学生のわたしたちの口数を減らすのに大いにかかわっていたことと。


あまりの息苦しさに、お互いに疲れたことだった。


疲れて疲れて、どんどん名前を呼ばなくなった。


どんどん話しかけなくなった。


お互いが、だんだん、これは仕方がないことなんだ、と諦めてしまった。


そうするしか。


……ああ、また、視界が暗転する。
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