名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「行くよ」

「ん」

「じゃ」

「また明日」


次の日の月曜日、普段と変わらないそうちゃんと一緒に帰った。


いつも通りの放課後を繰り返し、夜、おやすみと挨拶をする。


そうやって一週間がすぎた。

二週間がすぎた。

三週間がすぎた。


約束の日まで残りあと一週間だ、と自分に言い聞かせて。

だけど、本当に行くのかとはそうちゃんに確認できないまま、じりじり一日が終わるのを待ち。


とうとう四週間がすぎて、金曜日の夜、どちらからともなく予定を決めた。


待ち合わせは家の前で、時間もこの前と同じにして。


翌朝、決めた時間より少し早く、がちゃりとお隣の扉が開く音がしたから、追いかけるようにわたしも外に出た。


鳴る足音にそうちゃんが振り返る。


「おはよう佐藤さ…………」

「お、おはよう佐藤くん、変……?」


ものすごく練習して珍しく髪を巻いてみたわたしを認めて、一瞬ぽかんと固まってから、そうちゃんはゆっくり笑った。


「いや。似合ってる」

「……ありがとう」


消えそうなお礼に噴き出されて身じろぎしつつ、柔らかく細められた切れ長の瞳に、わたしも笑い返す。


「行こう」

「うん」


この間と同じ、ヒールで縮まった身長差。

甘やかな緊張。


汗ばむわたしの手を、そうちゃんがすくった。
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