名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
幼なじみという関係性は、一見とても明快で、簡単で、分かりやすくて、誰にでもよく知られている。


だけどほんとは、きっとそんなに綺麗に割り切れない。


この曖昧な関係を、幼なじみなのだ、としか説明できない。


幼なじみというのは、歪な形をした、幼なじみの二人にだけ意味がある、特別な関係性だと思う。


絆というと眩しすぎるし、友情では淡白すぎるし、恋心は本来幼なじみには直接的な関係はないし。


幼なじみは、ひどく特別な、何か曖昧な、つながりの名前だ。


わたしとそうちゃんにしか分からない、お互いのちょっとした口癖。

定義づけの難しい関係の微妙さ。

覚えている限りの思い出全て。


わたしたちの間柄は、そういうたくさんの共通項からできている。


この儚さを大事にしたい。壊さないように抱きしめていたい。


だって、関係の名前が変わっても、抱える思いが変わっても、幼なじみはどこまでも幼なじみのままだろう。


幼なじみであることも、幼なじみであったことも、おそらくそう変わらない。


幸せの分量が増えるとか多いとか、現在進行形であること以外には何も揺らがない。


わたしたちにとって、幼なじみであることは単なる事実だから。


幼なじみに特別ないろいろが含まれているのは、もうずっと当たり前のことだったから。
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