名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
わたしの前に並んでいたそうちゃんが、両手でそれぞれ一つずつ、合計二つグラスを取る。


「佐藤さんちょっと持ってて」

「あ、わたし氷入れるよ。ちょっと持ってて」

「了解」


グラスを片方、わたしに渡そうとしたのをとめて、アイストングを持つ。


金属的な鋭い冷たさのそれは、植物がモチーフになっているのだろうか、とてもおしゃれだ。


氷を挟む部分はお花で、つぼみが少し開いた、ちょうど貝殻みたいな形をしている。

持ち手は葉とレースで装飾されていて、横幅が狭い。ツタがくるくると絡むように縁取っているのが素敵だ。


幅が太すぎなくて持ちやすいのは、ケーキのお店だからかな。


ケーキが好きなのはやっぱり女性が多いようなイメージがあるからかもしれない。あとは家族連れとか。


スーパーの製氷機のアイストングだと、太くて持ちにくかったりする。


手が小さい子どもとか女性とかには結構使いにくいんだよね、あれ。


「氷、三つでいい?」

「ん」


大粒の氷を一、二、三と落とす。からん、かこん、かん、とグラスの中で小さく鳴った。


そうちゃんが片手ずつ交互に注いでくれて、列から外れて端に避けながら、片方を渡してくれた。


「ありがと」

「ん」


並んで席に戻り、グラスを置き、向かい合わせに座って。


じわり、体温が上がる。


……向かい合わせなのって、やっぱり慣れない。
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