名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
『だって、暗いの駄目じゃん』


思い出が浮かんで消えて、


『ばーか、うっさい』


浮かんで消えて、


『なあ』


暗転して。


『美里』

『バレンタインは?』

『好きな人、いるけど』

『……別に』

『佐藤さん』


暗転して。


『行くよ』

『うちに泊まれば』

『ねえ』

『勝手に入ってくんな』

『……いらないなら、いい』


暗転して。


『泣き虫』

『早く。遅いんだけど』

『じゃ』

『隣来ないの?』

『……あのさ』


暗転、して。


『みいちゃん』


浮かんで消えて、浮かんで消えて。


浮かんで。


消えて、くれない。


──みいちゃん。


消えて欲しくない思い出をなぞる度に、苦しくなっていく。


どんどんどんどん、苦しく、なっていく。


そうちゃんが好きな気持ちは本物なのに、繰り返す思い出が苦しいのも本物で。


夢を見る度、わたしは思い出のそうちゃんに恋をする。


何度も何度も、叶わない恋をする。
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