名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
持ってってよ、とルーズリーフを押しつける。


わたしを見て、ルーズリーフを見て、またわたしを見て、多分歪んで不恰好になっている顔を凝視して。


受け取るかを迷って空を切った大きな手は、思わずのように袋を掴んだ。


「やだじゃない、え、いや美里何言ってんの? ほんと何言ってんの?」


掴んだものの、かなり混乱しているらしいけど、知らない。


瞠目したままのそうちゃんに、ぐいぐい、押しつける。


「わたし二つあるから大丈夫だから。今度返してね」

「や、でも美里」


聞かない。


「現国ワタベ先生でしょ、あの人すごい量書くじゃん。ラップトップのとこならいつもの倍だよ。一回で五、六ページだよ。わたしにしておきなよ」


聞かない。


「それに今ならわたし、ココアで手を打つよ。お買い得だよ」


聞かない。


どうせそうちゃんのことだから、大量のルーズリーフをもらうのは気が引けて一枚だけとかにして、ものすごく小さい字で書くことになって困るに決まってる。


だから、ねえ、そうちゃん。


……受け取ってよ。
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