名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
わたしがそうちゃんにルーズリーフを押しつけたのは、確かな約束が欲しいと思ったからで。


そうちゃんがわたしを馬鹿と言ったのも、喉を鳴らしてぶわりと顔が赤くなったのも、多分、意図を推測して照れたからで。


ルーズリーフを受け取ったのは、多分、そういう意味だ。


……また明日、と言うような、そういう意味。


あんまり照れくさくてはっきり言葉にはできなかったけど、伝わったらしいので、ひとまずいいことにする。


今は、わたしがそうちゃんと約束をしたがったという事実があればいい。


顔がほてるのを誤魔化すみたいにうつむきつつ、教科書とノートとプリントをまとめたファイルを取り出して、ロッカーに鍵をかける。


はい、と渡して向き合った。


「でもなんでないの? 置いておきなよ。現代文って重いし家で使わなくない?」

「課題終わってなくて。要約して意見書くやつ」

「あー……」


現代文担当のワタベ先生は、単元が終わるごとに、五百字で要約する課題を出す。


授業内で問題文の大意とか用語とかを説明してもらえるから、そんなに難しくはないんだけど、教科書とノートがないと書けない課題なのだ。
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