名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「ちゃんと書いたんだけど」

「代わりに課題も教科書もノートも忘れて置いてきた、と」

「ん。先生には明日提出でってお願いしてきた。それで点数はくれるって」

「そっか、よかった」


そうちゃんは普段とても真面目で、課題はきっちりやってきっちり提出するタイプだ。


課題が書き終わっていないために方便としてそう言ったのではなくて、本当に課題は書き終わっているんだけど、残念ながら忘れて家に置いてきてしまったんだろう。


そうちゃんは嘘を吐くような性格ではない。


もしまだ終わっていないなら、まだ終わっていないと申告するはずだ。


授業態度もいいし、真面目だし、成績もいい。


だから先生も、少しお目こぼししてくれたに違いない。


「せっかく頑張って徹夜したのに」


ねえ。


……寝坊の原因は絶対それだよね、そうちゃん。


「……そのせいで寝坊して鞄忘れたら意味ないじゃん」


じとりと見やったわたしに、そうちゃんは至って真面目に頷いた。


「俺もそう思う」

「…………」


うろん気な視線を向けてしまったのは、仕方がないと思う。うん。
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