名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「美里、次物理。一式貸して。特に資料集貸して」


次の休み時間。


三時間目と四時間目の間。


少し焦った顔でわたしを呼びとめたそうちゃんに、首を振る。


「ごめん、ないから他の人に借りて。わたしは取ってるの、生物と地学だから」


うちの学校は、理科の基礎項目は、四つのうち二つを選んで履修していいことになっている。


生物基礎、物理基礎、地学基礎、化学基礎の中から、わたしは生物基礎と地学基礎を選択した。


大抵の文系の人はそうする。逆に、大抵の理系の人は物理基礎と化学基礎を選択する。


そうちゃんもその例にもれず、物理基礎と化学基礎を選択したのは知っていた。


わたしの一組とそうちゃんの四組は、生物も地学も合同授業だ。


ほとんどの人が生物と地学を取る一組と、ほんの少し、数人だけが生物と地学を取る四組とが合わさると、ちょうど一クラスぶんくらいの人数になるから。


だから、もしわたしと同じ生物と地学を履修するなら、わたしとそうちゃんは、その二つの授業のときだけ同じクラスになるはずなのだ。


でも、ちょっぴり期待した初回の授業に、生物でも地学でも、そうちゃんはいなかった。


そのあと何回か、三階の化学室まで階段を上って移動しているところを見たこともある。
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