名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
もはやお決まりの「行くよ」「うん」を済ませて、今日も今日とて、無言でそうちゃんの隣を歩く。


「ねえ」


突然かけられた声にびっくりして、思わず肩が跳ねた。


「……うん?」


誤魔化すようにへらりと笑みを浮かべたわたしには頓着しないだ、そうちゃんが前を指差す。


「飲み物買っていい?」


行く手に自動販売機が見えている。


ここの自動販売機はなぜか安いので、うちの学校の生徒は学校帰りによく飲み物を買うのだ。


通学路だから、多分、生徒たちが買うのを見越して高校生向けの低価格に設定してあるんだろう。販売戦略だと思う。


「うん、いいよ。じゃあわたしも買おうかな」

「ん」


頷きながら、そうちゃんはお財布をポケットから抜いて立ちどまった。


迷わず押された炭酸飲料水のボタンに、頬が緩む。


ああ、今でもそれが好きなんだなあ、となんだか懐かしい。


わたしもココアを買って、キャップを開ける。


濃厚な生クリーム仕立てのココアは喉に絡む寸前の濃い甘さで、隣に並ぶ同社のカフェオレより好きだ。


一口飲んだありし日のそうちゃんは、甘すぎる、と眉をしかめたけど。


「……ほんと、そのココア好きだね」
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